2013年3月4日掲載
2012年10月27日に台湾大学(中華民国台北市)で開催された、第5回台湾鳥類フォーラムに参加して、日本におけるアホウドリの保護について発表しましたので報告します。
今回、台湾に招待されることになったのは、2012年7月に中華民国野鳥学会から蕭定雄さんという学生さんが、アホウドリの話を聞きにきたことが始まりでした。台湾の北にある彭佳嶼には過去にアホウドリが生息していたため、アホウドリの再導入に関心があるとのことでした。この時、出口研究員とふたりで、日本での保護活動について説明したのですが、そのことがあって、鳥の研究集会で話してほしいという打診につながったようです。出口研究員ほか、アホウドリに直接携わっている所員の都合がつかず、ピンチヒッターのつもりで出かけました。
台湾鳥類フォーラムを主催する中華民国野鳥学会は、地方ごとにある野鳥団体の台湾全体の連合体です。フォーラムは国立台湾大学で行われ、午前はひとつでしたが、午後は二つの教室に分かれて、全体で16題の発表がありました。参加者はだいたい100名ぐらいでした。
演題は保全に関するものが多く、地域の産業振興をはかりながら、里地里山の環境保全をはかるテーマが目につきました。たとえば、クロツラヘラサギにやさしい養魚池(養魚法)について研究するとともに、そこで捕れた魚をブランド化して商品にするとか、サンジャク(台湾特産の美しいカラス科の鳥)をシンボルにしたお茶の有機栽培をするプロジェクトなどです。その関連で、兵庫県豊岡市のコウノトリの放鳥に関連した里山保全と地域振興は非常に注目されていると感じました。平岡はアホウドリの歴史と現在の保護活動についてあらましを話しましたが、同学会理事長の程建中教授みずから中国語に通訳をしてくださったのには恐縮するとともに、先方のアホウドリ再導入に対する熱意を感じました。
翌28日には同学会のメンバーと彭佳嶼を訪ねました。アホウドリの生息地である伊豆諸島鳥島によく似た地形で、ススキが茂っているところも昔の鳥島の記述とあい、なるほど昔アホウドリが生息していたというのもうなずけました。
この彭佳嶼訪問は直前まで知らされておらず、また私が依頼されていたのは鳥類フォーラムで話をすることだけでしたので、彭佳嶼訪問が一部メディアに、日本の山階鳥類研究所が台湾と共同でアホウドリの保護に乗り出したというような形で、政治的な意味づけまでつけて報道されたのには困惑しましたが、過去にアホウドリが生息していたこの島を訪れることができたのは素晴らしい体験でした。
今後、山階鳥類研究所として台湾の方達に協力できることがあるかどうかは白紙ですが、台湾の鳥類保護関係者の皆さんの熱意は十分に感じることができましたので、帰国後、所内のアホウドリ保護に携わっているメンバーにそのことを報告しました。末筆になりましたが、ご招待くださり、お世話いただいた、程理事長はじめとする中華民国野鳥学会の皆様に御礼申し上げます。
(自然誌研究室専門員・事務局広報主任 平岡考)
「山階鳥研ニュース」2013年1月号より