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2024年11月20日掲載

日本鳥学会と共催で「鳥の学校」標本製作講習会を開催しました

研究員(日本鳥学会企画委員)澤祐介

日本鳥学会では、学会員の研究者や大学院生が自分の専門とする分野以外の知識や技術を習得すること、またそれらを通じた異分野交流の機会を提供することにより、鳥学研究を推進することを目的として、「鳥の学校テーマ別講習会」を2007年から日本鳥学会の年次大会に連続する日程で開催しています。今年度の鳥の学校は、第15回テーマ別講習会『標本製作講習』と題し、東京大学での日本鳥学会年次大会(9月13〜16日)の翌17日に、岩見恭子研究員を講師として山階鳥研で行われました。

受講者は鳥学会年次大会のウェブサイトで公募し、10名が参加しました。参加者の多くは、全国各地の大学や博物館、自然観察施設などの関係者でした。標本は、大きな博物館だけでなく、各地の博物館や大学などで、地域の生物を集めて標本として保存していくことが重要です。実技講習の前に、岩見研究員より、標本はその時代の生物相・自然史を反映した貴重な記録であり、過去に遡って集めることはできず、そしてそれらを各地の機関で蓄積する意義などについて講義がありました。実技講習では、ウミネコを材料に、受講者1人につき1羽の仮剝製を製作しました。

今回は、1日という限られた時間内で全工程を学ぶため、前半と後半にパートを分けて講習が進められました。前半では、半解凍にしてある鳥の皮むきです。皮むき後は、本来であれば、脂肪除去や羽毛の洗浄・乾燥などがありますが、この工程は時間がかかるため、講師による実演と解説のみ行われました。後半では、山階鳥研であらかじめ洗浄乾燥まで済ませた別個体の「皮」を受講者1人につき1羽配布し、これを仮剥製に組む作業を行いました。この「3分クッキング」のような進め方が功を奏し、受講者全員、時間内に仮剝製の組み上げまで無事に完成し、全工程を終了することができました。その後の質疑応答では、受講者から各工程での詳細な内容、技術についての質問が飛び交いました。「普段悩みながら実施していた作業が明確になった」、「完成形の実物を見ることでどこまで作業すべきかがわかった」、「本やネットには載っていないような標本づくりのコツや工夫を学べた」などの感想をいただき、受講者にとって学びが多かった内容となったことがうかがえました。今回の講習会が各地での標本の蓄積に貢献できれば幸いです。

今回、私は日本鳥学会企画委員会のメンバーとして、鳥の学校運営に携わりました。共催である日本鳥学会の関係者、準備をしてくださった山階鳥研のメンバーに改めて御礼申し上げます。

写真:「鳥の学校」参加者のみなさん

「鳥の学校」参加者のみなさん

(文・さわ・ゆうすけ)

「山階鳥研ニュース」 2024年11月号より

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