鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2015年11月18日掲載

マミチャジナイ ボルネオで越冬が判明

2015年3月8日、インドネシアのカリマンタン島(ボルネオ)カンダンガンの東約18キロメートルの地点で、日本の鳥類標識調査の足環を装着したマミチャジナイが狩猟により捕獲されました。連絡を受けた山階鳥研で足環番号(4C-88711)をもとに記録を調べたところ、環境省織田山(おたやま)ステーション(福井県越前町笈松(おいまつ))で、2014年10月23日に佐藤文男研究員が捕獲し、足環を装着して放鳥した雄の成鳥と判明しました。

今回判明したマミチャジナイの越冬地。枠内はマミチャジナイの雄成鳥(今回移動が判明した個体ではありません)。

マミチャジナイはツグミの仲間(ヒタキ科)で、極東ロシアで繁殖、中国から東南アジアで越冬し、日本へはおもに秋に越冬地に向けて南下する際に通過するほか、西日本では越冬する個体もいます。しかし本種について日本を通過する鳥が東南アジアのどこまで飛んで行くかなどの情報は1994年に織田山ステーション放鳥、97年にフィリピン回収の1例(2年2ヶ月後)があるのみでした。

今回の記録は、日本で足環を装着されたマミチャジナイの国外からの同シーズン内の初めての回収記録となりました。これは日本から5,000kmもの渡りをしたことを意味します。佐藤文男研究員は「本種は織田山ステーションで1973〜2014年の42年間に5,849羽が標識放鳥されていますが、他地域からの回収は国内1例、国外2例しかなく(回収率0.05%)、いまだに、本種の渡り生態の多くが不明です。また、今回の回収により、他のツグミの仲間よりも長距離の渡りを行うことがわかってきましたが、なぜ、赤道以南にまで渡るのか興味深いです」と述べています。

「山階鳥研NEWS 2015年9月号」より

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