この度、島津久永氏の後任として理事長職を引き継ぐことになりました。今回理事長という大役を仰せつかり、身の引き締まる思いでおります。
山階鳥類研究所は1932年に建設された、鳥類研究の第一人者故山階芳麿博士の山階家鳥類標本館を母体に、1942年に文部省(現文部科学省)の認可を得て、80余年一貫して日本の鳥類学研究を支えてきました。標本(約7万点)、図書(約4万冊)、その他の資料や鳥類標識調査データ(約500万件)を保有して、国内外の研究者に、それらの情報を提供し、お蔭さまで国際的にも高く評価されてきております。
文部科学省の科学研究費補助金を受けて鳥類の研究を続けている一方で、環境省からの委託を受け渡り鳥の生態調査などなど、日本の鳥類研究の中心的な役割を果たしてきています。最近ではヤンバルクイナの保全研究やアホウドリの小笠原再導入プロジェクトなどは、広く世の中の知るところになっています。
鳥はもっとも環境に影響されやすい生き物の一つであり、自然環境のバロメーターともいわれています。生態系の頂点にいるワシやタカなど猛禽類が生息しているということは、そこには餌となる小動物がいます。そして、その小動物が食べる虫や木の実などがあり、それらを支える生物が存在していることになります。一方で、鳥は「渡り」を始めとして、国境にとらわれずに広範囲に移動する種も多く、地球規模での保護を必要としています。
昨今は環境に対する関心が高まっておりますが、森林消滅、水・大気汚染、温暖化など、地球環境は著しく悪化しています。そして、絶滅または絶滅危惧される鳥が増えているのも現実です。当研究所では、鳥類の保護を通じて生物多様性の維持に努め、地球環境の保全にも貢献することを目指しております。
また、関係各省庁、地方公共団体、民間の団体や各機関、更には海外の関係組織との連携をして、今後も研究の質を高めていく所存です。それらの活動を維持していくための、資金面の充実が重要と考えています。
つきましては、多くの皆様に物心両面でのご理解とご支援をお願い申し上げます。