山階鳥類研究所の創設者、故山階芳麿博士(1900-1989)は、生前、鳥学の分野のノーベル賞とも呼ばれるジャン・デラクール賞を受賞するなどの功績を残しました。山階芳麿賞は、山階博士の功績を讃えて、平成4年、財団設立50周年の記念に、我が国の鳥学研究の発展と鳥類の保護活動に寄与された個人あるいは団体を顕彰する目的で設けられました。
受賞者は「山階芳麿賞」選考委員会で選考されます。受賞者は、隔年度1名とし、選考の結果該当者がない場合には、その年度の表彰は行いません。選考委員会は学識経験者の他、理事長が必要かつ適格であると判断する者(5名以上12名以内)で構成されています。受賞者の選考は、出席選考委員の過半数をもって決定します。
受賞者には、秋篠宮文仁総裁から表彰状と山階芳麿賞記念メダルが授与されます。記念メダルのデザインは、表が山階博士の肖像、裏がヤンバルクイナのレリーフとなっていて、受賞年と受賞者の氏名が刻印されます。
メダルの裏にデザインされるヤンバルクイナは、沖縄県で発見され、1981年に山階博士らが新種として発表した鳥です。現在では山階鳥類研究所のシンボルのひとつになっています。また、2003年の第12回からは、さらに副賞として「朝日新聞社賞」(賞金50万円と盾)が受賞者に贈られることになりました。
※肩書きは受賞当時。
※それぞれの贈呈式や講演会、シンポジウムの詳細はこれまで開催したイベントのページをご覧ください。
内藤靖彦(国立極地研究所名誉教授)
受賞理由:世界に先駆けてバイオロギング研究を立ち上げ鳥類その他の動物に問する新しい研究手法の展開に大きな貢献をされ若い研究者の育成にも尽力された。
日本雁を保護する会
受賞理由:約半世紀前の同会創立当時、激減していた、日本に渡来するガン類を対象に、保護と調査研究を国際的な広がりをもって進め、日本に渡来するガン類についての知識を大きく前進させ、保全上も大きな成果をあげられた。
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渡辺茂(慶應義塾大学名誉教授)
受賞理由:鳥類にかんする動物行動学および比較神経科学において顕著な功績を収めるとともに、これらの分野の社会に対する普及啓発に貢献された。
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江崎保男(兵庫県立大学教授・兵庫県立コウノトリの郷公園統括研究部長)
受賞理由:生態学で目覚ましい研究業績を上げるとともに、保全上も重要な仕事をされ、社会との結びつきの点からも有意義な活動を行われた。
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上田恵介(立教大学名誉教授)
受賞理由:鳥類の行動生態学の分野の多岐に亘るテーマで、野外観察や野外実験などのフィールドワークを中心とした研究を行い、後進の育成、普及啓発にも貢献された。
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【特別賞】橘川次郎(クイーンズランド大学名誉教授)
受賞理由:ハイムネメジロを対象とした長期に及ぶ研究から、多岐にわたる研究業績をあげるとともに、熱帯雨林における鳥類群集の研究でも大きな成果をあげられた。多くの後進を育成し、日本と海外の学界との交流に貢献された。
2016年5月逝去
【特別賞】小西正一(カリフォルニア工科大学名誉教授)
受賞理由:鳥類の歌の学習と音源に関する情報処理について研究し、神経行動学の発展に寄与したことに加え、多くの後進を育てるとともに、研究成果が一般にもしばしば紹介されたことなどで日本の研究者と鳥類愛好家も啓発された。
2020年7月逝去
※ 山階芳麿賞は、日本の鳥類の研究や保護に携わられた方々を対象としてきましたが、橘川博士、小西博士の研究は主として日本国外で行われたものであるため、通常の山階芳麿賞の枠での贈呈に困難がありました。しかし日本出身で世界的な業績を挙げ、日本の鳥学にもさまざまな意味で多大な影響を与えてきたことは、日本における鳥学研究の発展に資することを目的とする山階芳麿賞の趣旨に合致すると判断されて、特別賞をお二人に贈呈することになったものです。
日本イヌワシ研究会
受賞理由:30年以上に亘りイヌワシについてきわめて重要な科学的データを提供するとともに、生態的な知見にもとづく保護上の実践を行った。また普及啓発にも努めてこられた。
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森岡弘之(国立科学博物館名誉研究員)
受賞理由:鳥類学のすべての分野の基礎となる鳥類分類学において、大きな研究成果をあげ、また社会への貢献や後進の指導にも貢献された。
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2014年12月逝去
立川 涼(愛媛大学名誉教授)
受賞理由:人間活動由来の汚染物質が鳥類をはじめとする生態系に与える影響を明らかにし、社会への啓蒙、後進の指導にも尽力された。
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2017年5月逝去
長谷川 博(東邦大学教授)
受賞理由:生態学と行動学の科学的知見をもとにアホウドリの個体数回復を成功に導き、鳥類保護に関して社会に対する普及啓蒙を実践された。
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由井正敏(岩手県立大学教授)
受賞理由:森林にすむ鳥類の個体数推定法を確立し、森林と鳥類群集の関係を基礎応用の両面から追及され、後進の指導にも尽力された。
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石居 進(早稲田大学名誉教授)
受賞理由:鳥類の生殖腺刺激ホルモンの解明に取り組み、絶滅危惧種の繁殖促進に貢献した。また、後進の指導にも尽力された。
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2024年6月逝去
中村浩志(信州大学教授)
受賞理由:カッコウと宿主の共進化、特に宿主転換と宿主に対応する托卵系統の存在を明らかにし、後進の指導に尽力された。
現在:一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所代表理事、ライチョウ会議議長
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小城春雄(北海道大学大学院教授)
受賞理由:北太平洋における海鳥の生態解明とその研究成果を基にした海鳥保護の礎を築き、後進の指導に尽力された。
2002年3月31日、北海道大学を定年退官。同年4月より同大学名誉教授。
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藤巻裕蔵(帯広畜産大学教授)
受賞理由:北海道に生息するエゾライチョウの野外研究を基にその飼育や保護管理に貢献し、日本とロシアの鳥類研究者との交流を推進に尽力された。
2002年3月31日、帯広畜産大学教授定年退官。同年4月1日より同大学名誉教授。
山岸 哲(京都大学大学院教授)
受賞理由:日本産鳥類の社会生態学的研究の推進と後進の指導に尽力され、マダガスカル島のオオハシモズ科の適応放散の研究と保護に貢献された。
2002年3月31日、京都大学大学院定年退官。同年4月1日〜2010年3月山階鳥類研究所所長。
樋口広芳(東京大学大学院教授)
受賞理由:鳥類生態学に生物進化の多次元性を取り入れた研究で成果をあげ、渡り鳥の人工衛星追跡調査手法を確立して保全生物学の推進に尽力された。
正富宏之(専修大学北海道短期大学教授)
受賞理由:タンチョウの生態研究と保護に尽力され、エソグラム手法を用いた独創的な行動学的業績を残された。
2003年3月31日。専修大学北海道短期大学定年退職。同年4月1日より同大学名誉教授。
中村登流(上越教育大学名誉教授)
受賞理由:エナガ・カラ類の研究を通し鳥類社会学の基礎を築き、後進の指導に尽力された。
2007年11月逝去
黒田長久(山階鳥類研究所所長)
受賞理由:鳥類の形態・生態に関する幅広い分野の研究の傍ら、保護にも尽力され、現代鳥学界における礎石的存在である。
2009年2月逝去
中村 司(山梨大学名誉教授)
受賞理由:鳥類の渡りに関する生理学的研究を続ける傍ら、山梨県の鳥類調査及び保護に尽力され鳥類学並びに鳥類保護に貢献をされた。
国際鳥学委員会シニア委員、ニューヨーク科学アカデミー会員、日本鳥学会名誉会員
2018年11月逝去
松山資郎(山階鳥類研究所顧問)
受賞理由:応用鳥学、特に野生鳥類の保護管理に関する基礎的研究を推進し、後進の指導に成果をあげる等、わが国の鳥学並びに野鳥保護の発展に貢献された。
2000年8月逝去
羽田健三(信州大学名誉教授)
受賞理由:独創的な雁鴨科鳥類の群集生態学研究を続ける傍ら、鳥類生態学を志す後進の育成に成果をあげるなどわが国の鳥学の発展に貢献された。
1994年11月逝去