プレスリリースについての補足とお願い

繁殖中のツバメの巣を壊さないようにお願いいたします

2015年6月17日更新

2015年5月22日に、「2011 年に使用されたツバメの巣を調査したところ全国 21 都道府県中、1 都 12 県の巣から放射性セシウムが検出されました 」のタイトルでプレスリリースを行い、複数のメディアによって取り上げられました。その結果、報道をご覧になった多くの皆様からお問い合わせをいただきました。プレスリリースが簡潔にすぎて不親切というお叱りもいただきました。ここにお詫びするとともに、いくつかの点について補足し、ツバメの巣の保護についてお願いいたします。

山階鳥類研究所 所長 林良博

調査した都道府県

今回の調査では、2011年11月から2012年3月まで、新聞や山階鳥研のウェブサイトなどのほか、地域の野鳥団体関係者などにもお願いして、日本全国に、2011年に繁殖に使用されたツバメの巣の寄贈の呼びかけをおこない、それに応えてお送りいただいた巣について調査しました。特定の意図や基準によって対象の都道府県を選定したものではありません。

巣の採集地点と県ごとの放射性セシウム濃度

この点は、論文から、採集地点の地図と、県ごとの放射性セシウム濃度の平均値±標準偏差、最大値、最小値の表を下記に掲載いたしましたのでご覧ください。

なお、論文の全文を読まれたい方は、山階鳥類研究所の広報担当(下記)までお問い合わせください。発表先の『日本鳥学会誌』は、会費制の雑誌であるため、同誌掲載のすべての論文について発表後2年間はウェブ上での一般公開はできず、2年後にウェブ上で一般公開となります。

発表の時期

今回の発表は、2011年のツバメの巣の調査結果がまとまって、4月下旬に学術論文が公刊になったのを受けて出したものです。2011年の結果の論文が今公刊になったことについては、巣の収集が2012年の春までかかっていること、共同研究として分析を担当した国立環境研究所ではほかにもさまざまな放射性物質の分析を担当されているために、分析に時間が取られたこと、学術論文として発表できるためには、著者以外の研究者が原稿をチェックする査読という仕組みを経る必要があるため、どうしてもタイムラグが生ずるなどいくつかの要因でこのようになりました。

人体への影響(ツバメの繁殖についてのお願い)

今回の結果で得られたツバメの巣に含まれる放射性セシウム濃度は、通常の生活を営んでいる限り、人体に直ちに影響が出るレベルではありません。放射線量は、放射線を発する物体からの距離の二乗に反比例して低下します。距離50センチメートル、5メートルでの線量は距離5センチメートルのそれぞれ、1/100、1/10,000となります。さらに、この調査結果は2011年当時の巣に関するものです。その後4年の経過を経て、空間線量が低下していることも知られており、巣の周辺おおむね数百メートルほどの範囲で得られる泥や藁などを使ったツバメの巣の放射性セシウム濃度も当時より低下していると推測されます。

この発表によって、繁殖中のツバメの巣が壊されるなどのことが全国で起こるとするなら、野生動物保護、生物多様性保全の見地から好ましくないと考えています。この点についてなにとぞご理解いただけますようお願いいたします。

<本件についてのお問い合わせ先>
山階鳥研 広報主任 平岡考 電話(代表)04-7182-1101
E-mail: koho☆yamashina.or.jp(メール送信の際には☆を小文字の@に変えてください。)

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