2017年5月23日更新
ここでは、山階鳥類研究所が絶滅危惧種のアホウドリの保護研究を行っている伊豆諸島鳥島をネット観光していただきましょう。
なお、鳥島は島全体が天然記念物に指定されており、許可なしに上陸することはできません。
八丈島の南約300km、小笠原諸島聟島(むこじま)列島の北約370kmにある無人島です。島の直径は約3km、歩いて横断すると1時間ほどです。ここに地球上のアホウドリのうちの大部分が繁殖しています。江戸時代には、この島の平坦な部分はすべてアホウドリに埋め尽くされていたといいます。どのような景色だったのでしょうか。
島に上陸するとアホウドリの弟分にあたるクロアシアホウドリが出迎えてくれます。ここは鳥たちが主人公の島、「鳥島」であることを改めて感じさせられます。
気象庁鳥島気象観測所(中央気象台鳥島測候所)は1947年に開設され、1965年の群発地震による避難まで、18年間、職員が駐在していました。
1965年の避難後、気象観測所は廃虚になりましたが、現在でもさまざまな生活の痕跡が残っています。写真は床屋さんの椅子のようです。
ここが、山階鳥研がアホウドリの個体数回復のためのデコイ作戦をやっている初寝崎という場所です。傾斜が緩く、草が生えていて、土壌が安定しており、ここで多数のアホウドリが繁殖するようになれば、繁殖成功率の格段の向上が見込まれます。
無人島の鳥島には、通常の電源はありません。アホウドリを誘き寄せるための音声装置や遠隔監視システムなどの電源は太陽電池パネルで発電して得ています(写真は遠隔監視システムのソーラーパネル)。
デコイ作戦に従事する山階鳥研の調査員は、旧気象観測所の廃虚のなかでは比較的良好な地震計記録室を改修して寝泊まりしています。
斜面の谷あいには所により灌木があり、5月にはガクアジサイの花が見られます。
海岸性のイソギクは秋の調査では美しい花を見ることができます。
島内に多く見られます。「ラセイタ(羅背板)」とはポルトガル語でラシャのことで、厚みがあり、表面に毛が密生した葉の手触りに由来する名前のようです。
花は2月から4月ころにかけて見られます。本州南部、伊豆諸島、小笠原の海岸に分布するスミレの変種です。
4月にはシャリンバイの花が美しく咲いています。
人が持込んだもののようですが、美しい花を見せてくれます。
海にはバンドウイルカやザトウクジラを見ることができます。
離島の鳥島には、特に春や秋の渡りの時期にしばしば意外な珍客が訪れます。写真は2003年10月に観察した珍しいアカハラダカ。
現在、島中に跋扈(ばっこ)していますが、気象庁時代にはいなかったようです。1970年代以降に増加した移入種と考えられます。このために以前は沢山いた日本特産の海鳥オーストンウミツバメは近年繁殖しなくなってしまいました。従来からの生態系の回復のためにクマネズミの駆除が望まれます。
クロアシアホウドリはアホウドリよりひと回り小さい弟分とも言える鳥です。2003年5月の調査では、島内で約1500番いのクロアシアホウドリの繁殖が認められています。
戦後、小笠原がアメリカに統治されていた間は、鳥島が台風観測の最前線でした。
ドームの中にはパラボラアンテナがあります。
島の北側の明治の噴火の溶岩流です。この下に羽毛採取に従事していた人たちの玉置村がありました。当時の全島民125人がこの溶岩流にのまれました。
中央火口丘の硫黄山と外輪山の旭山にはさまれた平坦な朝日球場。このネーミングは気象庁の人たちが広い場所ということで命名したものでしょうか。
朝日球場に落ちているひとかかえもある火山弾です。火山の専門家によれば記録的に大きなものということです。
二重式火山の中央火口丘で、標高394mの島の最高峰です。2002年8月には小規模の噴火が認められました。
島の東南端にある燕崎のアホウドリ繁殖地は険しい崖に囲まれた急斜面です。この崖がわずかに生き延びたアホウドリを羽毛採集人から守ったのでしょうか。
燕崎のアホウドリ繁殖地に慎重に下ってゆく調査員たち。
1951年にごくわずかのアホウドリが再発見された繁殖地です。土砂が不安定なため環境省と東京都が土留め工事を施しています。2002年11月現在、約270番いのアホウドリの繁殖が認められています。
繁殖地の燕崎沖にはしばしばアホウドリの群れが着水しています(ラフトとは水上の群れのこと)。
島に調査に入っていると、クルーズの客船が鳥島を周回してゆくことがあります。キャンプ生活をしている調査員は、冷たいビールや御馳走のある豪華客船の生活を羨みますが、案外、客船の乗客のほうでは俗世間から隔絶された調査員たちを羨んでいるかもしれません。
天候のよい日には、しばしば美しい夕焼けが見られ、孤島の1日を締めくくってくれます。