山階鳥類研究所 アホウドリのページアホウドリ 復活への展望

アホウドリ再導入プロジェクト
聟島飼育ボランティア体験記

2017年5月23日更新

アホウドリの小笠原再導入プロジェクトは、これまで多くの方々のご協力があってこそ大きな成果をあげることができました。移送したヒナを聟島で人工飼育するにあたってはボランティアの皆さんの力をお借りしました。

2010年1月末から2月下旬の約4週間、ボランティアとして参加された岩本麻未さんに、体験記をお願いしました。
(山階鳥研NEWS 2010年7月号より)

ヒナの瞳に魅せられて

青く透き通る海、遠くの雲まで見渡せる空、波の音だけが聞こえる静かな砂浜…。ここは、小笠原諸島にある無人島・聟島です。

生粋のケータイ大好きっ子の私が電波のない絶海の孤島・聟島行きを決意したのは他でもない、アホウドリ再導入計画に魅せられてしまったからです。幼いころから動物が大好き。サークルではクマの調査、バイトも水族館。そんな動物三昧の日々。そんな私が聟島行きを決めたのは、その夢のある内容と卒論でのカワウの飼育を控え海鳥飼育について学びたかったこと、そして何より参加者募集の資料に添えられたアホウドリの純粋な瞳の写真にやられてしまったからです。「例えケータイが使えなくとも、聟島に渡ってアホウドリを育てたい!」

アホウドリのヒナ

アホウドリのヒナ。この瞳に魅せられました。

そして気がつけば聟島行きの船の上。天候の影響で1日遅れの出港となりました。その後慌ただしく迎えたヒナ受け入れも、またしても天候の影響で2日遅れ。移送用の箱から外を覗くヒナはとてもか弱くみえました。そして次の日から先輩メンバーから指導をうけながらの給餌が始まりました。日が経つにつれ、エサの量はどんどん増え、またそれと共にか弱かったヒナの体も大きく、逞しくなりました。また、その頃になると私達も島の生活に慣れ、自由時間には島探検や読書、時には海で泳いだり釣りをするなど、聟島生活を満喫することができました。

そんな楽しい日々の中で、私達の帰る日は刻々と近づいていました。そしてヒナ達は、人間のほうが負けてしまうのではないかと思うほどに成長していました。ついに迎えた離島時は、再び天候の影響で船がいつ来るのかわからず、慌ただしく荷造り。最後の最後まで自然に振り回されっぱなしでした。

ヒナ、自然、そして人

聟島生活の中で、私は多くのことを学びました。衛生管理に常に気を配り、人間よりもヒナ優先。そこまで気を使って始めて、人工飼育は成る、ということ。また、各地で活躍する参加メンバーとの話はとても面白く、勉強になりました。

そして何より勉強になったのは、聟島という自然。こちらの思うようにいかない海況。予定外の雨。立っていられないほど強い風。それと共にある動植物。私は聟島生活の中で、自然の素晴らしさ、偉大さを見せつけられた気がします。人間にはどうにも出来ない自然。そこに立ち向かう人工飼育のアホウドリ。私がこれから動物に関わっていくうえで、「自然」という存在はこれからも大きく立ちはだかることでしょう。その存在を、聟島生活の中で強く感じることができたことは、私の大きな財産です。また、多くの人と出会い、共に活動できたこと、アホウドリの人工飼育に携わることが出来たことをとてもうれしく、誇りに思います。

ヒナへの給餌作業

保定(鳥を押さえること)、コーキングガンによる給餌、補助の3人一組で行う給餌作業。左側の白い帽子が岩本麻未さん。

このプロジェクトから学んだすべてのことを活かし、これからの動物ライフを満喫していくことを心に誓うと共に、プロジェクトに携わったすべての人に感謝し、また、多くの人たちに支えられて育ったアホウドリ達が聟島に根付き、再び聟島の空を飛びまわる日を心から楽しみにしています!
 (名城大学 農学部 4年 岩本 麻未)

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