2014年10月22日掲載
山階鳥研が、絶滅危惧種アホウドリの小笠原再導入のプロジェクトを行っている小笠原群島聟島で、出口智広研究員らの調査の結果、13〜14年の繁殖期に個体識別された同種の飛来個体数は8個体でした。10〜11、11〜12、 12〜13年の飛来数の10個体、10個体、16個体を下回りました。8個体のうち、人工飼育個体は3個体で、野生個体は5個体でした。また、飛来個体の確認頻度、日ごとの確認個体数とも昨年よりも低下しました。
これはひとつには今年2月に音声装置が故障したためと考えられます。さらに、未繁殖のアホウドリは同種のヒナに強い関心を示しますが、昨年、今年とヒナの移送を行っておらず、ヒナがいないために誘引効果が低かった可能性があります。、2012年11月に続き、2013年11月に産卵した、人工飼育個体と野生個体のつがいについては、今シーズンも卵は孵化にいたりませんでした(山階鳥研NEWS 2014年3月(252)号 参照)。このつがいが繁殖に成功してヒナが生まれれば誘引と定着の効果が高まると予想されます。また、音声装置の修理など誘引力を高める対策を進めることが必要です。
この事業は山階鳥研が、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金、朝日新聞社、キヤノン株式会社ほかの支援を得ておこなっています。帰還状況の調査の一部は山階鳥研とNHKが共同で実施しています。
本年2月23日から3月16日まで、佐藤文男・富田直樹研究員らが伊豆諸島鳥島のアホウドリの調査を、環境省の請負事業として行いました。
この結果、「デコイ作戦」として山階鳥研が1992年から2006年まで誘致を行ってアホウドリの新たな繁殖地を確立することに成功した初寝崎で、98羽のヒナを確認しました。これは前年比22.5パーセントの増加です。これに、従来からの繁殖地である燕崎の295羽と、燕崎から崖を登った場所で、近年繁殖が始まった子持山の2羽を合計して鳥島全体での雛数は396羽となり、前年比で4.2パーセントの増加となりました。