読み物コーナー

2020年3月11日掲載

「忙しさ」と「後ろめたさ」を振り払うために

保全研究室室長 水田 拓

2019年6月着任した水田保全研究室長の毎日は、室員・臨時職員の管理統括、外部・所内との折衝などに加え室の野外調査に自身の研究と多忙を極めています。傍からは忙しくともクールに仕事をこなしているように見えるのですが、心の中は。自己紹介を兼ね、今後の抱負について語ってもらいました。

山階鳥研ニュース」2020年3月号より

室長に就任してはや8カ月が経とうとしています。この間、あらためて気づいたことは、室長の仕事は想像していた以上に忙しい、ということでした。この忙しさはきっと前任の出口さんと尾崎さんが専門的かつ多岐(たき)にわたる仕事をされていたせいに違いないと、お二人を恨めしく思っているところです。

と、そんなことを考えているときに、以前どこかに書かれていた言葉をふと思い出しました。いわく、『「忙しい」を口癖にするのは自分の仕事に自信のない人だ。』

ブスリ。胸に突き刺さります。なるほど、今の自分によく当てはまるなあ。

少々自己分析してみると、私はこれまで奄美大島における希少種の保全に携(たずさ)わっていたので、奄美大島の生き物や琉球列島の鳥類、あるいは希少種や生物多様性の保全といった分野では少なからずモノを言うことができると思っていますが、それ以外のことに関してまで幅広く自信を持っているわけではありません。なのに、保全研究室にいると自分の守備範囲を超えてさまざまな案件が降りかかってきます。そんな状況にいると自分の能力が追いつかず、つい「忙しい」という言葉が(口癖とはいわないまでも)口をついて出てくるのではないか。そんなふうに思います。

では、そうした「忙しさ」から逃れるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、自分の守備範囲から外れた仕事は引き受けずにより適切な人に振る、ということが考えられます。とても魅力的な案ですね。ですが、それが過ぎると他人に負担をかけ、自分自身の成長の機会も失ってしまいます。少々自信がなくても自信のあるふりをして引き受け、その代わり自信が持てるようその分野についてきちんと勉強する、そんな姿勢で仕事に臨(のぞ)むことで、もしかしたら自然と「忙しさ」を感じることはなくなってくるのかもしれません。

また、これと関連するかもしれませんが、降りかかってくる仕事の多くが、水田個人ではなく「山階鳥研の保全研究室長」という肩書きをめがけてきていることにも、仕方がないとはいえある種の後ろめたさのようなものを感じてしまいます。この「後ろめたさ」から自由になるためには、やはり守備範囲外のこともきちんと勉強していくしかないのでしょう。

勉強不足と表裏一体の「忙しさ」と「後ろめたさ」。それらを振り払うべく、今後も精進を続けたいと思います。皆様からのご指導は何よりの助けになります。これからもどうぞよろしくお願いします。

先日は文化財(天然記念物の鳥類)保護の仕事で沖縄県宮古島市に行ってきました。 (上)20数年前に訪れたときにはフェリーで渡った伊良部島には宮古島から立派な橋が架かっていました。 (下)伊良部島に隣接する下地島の佐和田の浜では、以前奄美大島に長期間滞在していたコウノトリと再会しました。小さくてわかりづらいですが、コウノトリとアオサギ、クロサギ(白色型)、遠くにカワウが写っています。

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