2022年4月6日掲載
山階鳥研も主催団体のひとつとして参加している、全国鳥類繁殖分布調査は、一般の方にボランティアで参加していただいて、全国の鳥類の生息状況を記録するものです。この調査の事務局となっているNPO法人バードリサーチの植田睦之さんに、調査の趣旨やこれまでにわかってきたことの一端を紹介していただきます。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。(※)
植田睦之(全国鳥類繁殖分布調査事務局/バードリサーチ)
しばしば起きる大規模な災害、中山間地の過疎化や農林業の変化、そして気候変動。日本の自然は大きく変化しています。鳥もスズメの減少が話題になったように、自然の変化に伴い思いもかけない鳥が減ったり増えたりしています。そんな鳥たちの現状を明らかにし、対策を考えるために、1970年代と90年代に「緑の国勢調査」として環境省は日本の鳥の現状を調査しました。最後の調査から20年が経った今、調査をする時なのですが、残念ながら国として調査をできない状況になってしまっています。そこで、バードリサーチや山階鳥類研究所などのNGOが中心となり、環境省、大学などの研究機関等との共同調査としてサントリー世界愛鳥基金や自然保護助成基金などの支援を受け「全国鳥類繁殖分布調査」が2016年から5年計画でスタートしました。
この調査は過去に調査された全国約2,300のコースを調査するとともに、アンケート情報を収集して日本で繁殖するすべての種の分布図を描く調査です。この2年間で約半分のコースの調査が終了し、日本の鳥の変化が見えてきました。目立つのはガビチョウやソウシチョウなどの外来鳥やアオサギやカワウなどの大型の魚食性の鳥の分布の拡大で す。魚食性の鳥では、ゴイサギやカイツブリなど小型の種は逆に分布が縮小してしまっていました。嬉しい変化もあります。1990年代は減少が顕著で心配されていたアカショウビンやサンコウチョウなどの夏鳥ですが、今回の調査では新たに記録されるようになったコースが多く、その復活が見られているのです。
たくさんの方の参加/協力で、以上のような成果が上がってきましたが、地域や環境による分布変化の違いなどがわかれば、分布変化の原因が推測できるようになり、必要な場合はその対策を実施することができるようになります。そのためには、さらに多くの情報をあつめていく必要があります。地域によってはまだ調査者の決まっていないコースも多くありますし、また、全コースの調査担当者が決まっている地域についても、コースの記録だけではその地域の鳥の分布を明らかにするには不十分で、アンケートによる補完が必要です。この調査の趣旨に賛同いただける皆様、ぜひ調査にご参加ください。
調査の詳細情報や参加は以下のホームページからご覧/登録ください。不明点等あれば、調査事務局にお問い合わせください。
(文 うえた・むつゆき)
【主催団体】 バードリサーチ、日本野鳥の会、日本自然保護協会、日本鳥類標識協会、山階鳥類研究所、環境省生物多様性センター
【ウェブサイト】 http://www.bird-atlas.jp
【調査事務局】 バードリサーチ(植田) bbs☆bird-research.jp(メール送信の際は☆を小文字の@に変えてください。)
※2022年4月6日追記)調査の結果がまとまりました。くわしくはこちらのページをごらんください。