2015年4月8日掲載
山階鳥研が絶滅危惧種アホウドリの小笠原再導入のプロジェクトを行っている小笠原群島 聟島(むこじま)での、この繁殖期の状況をお知らせします。
2015年1月に、出口智広研究員らが、新たにヒナのデコイ(模型)10体を設置しました。このデコイは1ヶ月齢のヒナを忠実に再現したものです。
聟島では2013〜14年の繁殖期の観察で、個体識別された本種の飛来個体数が、それ以前の3シーズンより減少しています(本紙昨年9月号参照)。アホウドリの若鳥はヒナの存在によって強く誘引されますが、12年2月でヒナの移送・人工飼育が終了し、08〜12年までと異なりヒナの存在がなくなったことが一因と考えられました。今回のヒナのデコイ設置はこの判断によるもので、12年までヒナの飼育が行われた場所では、従来から設置している、55体の成鳥のサイズのデコイのうち、10体をヒナのデコイに交換して設置しました。
過去2シーズンにわたって産卵の実績のある、08年に聟島を巣立った個体(色足環番号Y01)と、野生個体(足環なし)のつがいについて、1月13日に営巣場所を出口研究員が確認したところ、ヒナは孵化しておらず、細かく割れた卵殻のみが発見されました。卵が受精卵だったかどうかは外見からは判断できませんでした。しかし、つがいの2個体は、互いに寄り添い、求愛のダンスを頻繁に行っており、来シーズン以降の繁殖に期待を抱かせました。
この事業は、(公財)山階鳥類研究所が、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金等の支援を得て、伊豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原群島聟島に移送し、新しい繁殖地を形成する目的で08(平成20)年から実施しているものです。