このページではヤンバルクイナの減少のようすと、その原因について見てゆきます。
ヤンバルクイナの減少の大きな原因は、もともと沖縄島の自然界には生息していなかったマングースとノネコによる捕食であると考えられています。地上性の捕食動物のいない沖縄島で、そのような条件にあわせて何百万年かけて進化してきた生物たちは、体のつくりも生態も、捕食動物から逃れられるような備えがなく、やすやすと彼らに殺されてしまうのです。ヤンバルクイナばかりでなく、この島にしかいないトカゲやカエル、昆虫類などが、彼らのために生存を脅かされていると考えられます。2005年6月に外来生物法が施行されましたが、ヤンバルクイナと沖縄の動物たちの現状はまさに、外来生物のもたらす問題点をもっとも先鋭に浮き彫りにしています。
ヤンバルクイナの分布域の南限の変化,2000-01年と2003年のヤンバルクイナの分布域,ほぼ同時期のマングースの捕獲状況をそれぞれ図に示しました。
ヤンバルクイナの分布域の南限は,近年になるほど北上しています。マングースの捕獲地域とヤンバルクイナの生息域は,ほとんど重複していません。すなわち,マングースの広がりとともにヤンバルクイナの分布域が減少していることがわかります。
ヤンバルクイナの分布域南限の変化
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2000~2001年 |
2003年 |
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マングースの |
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2000年10月~2001年3月 |
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2003年4月~2004年3月 |
移入種(=外来種;マングース,ノネコ)による捕食、人間の増加に従い個体数を増やしているハシブトガラスによる捕食,森林伐採,道路開発にともなう交通事故、側溝への落下など、ヤンバルクイナをはじめとする沖縄固有の生物には多くの危険が迫っています。
ハブを駆除する目的で沖縄島に移入されたマングース
(原戸鉄二郎氏・提供)
ネコの糞から見つかったヤンバルクイナの羽。ネコはハンティング能力に優れ、成鳥も襲って食べます(金城道男氏・提供)
県道70号線で交通事故に遭い死亡したヤンバルクイナの成鳥。2003年5月,国頭村で撮影
(環境省やんばる野生生物保護センター・提供)
やんばる地域で増えているハシブトガラス。
卵やヒナを襲うと考えられています
森林伐採が進むやんばるの森。森林が減ってしまうとともに、道路によって森が分断化しています。かつてヤンバルクイナのタイプ標本が得られた場所(=写真)も例外ではありません。
林道の側溝に落ちた小動物は地上に上がれず死んでしまいます。上がれずに死んだ沖縄諸島固有種のリュウキュウヤマガメ
現在、一部の道路では側溝の片側に傾斜をつけて、誤って落ちた動物たちが上がれるような工夫もされています。